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医薬品業界の刷新 知的財産権の有効な処方

「評価承認制度の改革を進め、医薬品・医療器械のイノベーションを奨励することに関する意見」が発表され、複数の知財施策が焦点になる

2017年10月8日、中国共産党中央弁公庁と国務院弁公庁とが「評価承認制度の改革を進め、医薬品・医療器械のイノベーションを奨励することに関する意見」(以下、「意見」という)を共同で発表した。「意見」は、医薬品・医療器械の産業構造の調整と技術革新について、産業競争力を引き上げて全体的な配分を行っている。なお、医薬品特許連携制度(Patent Linkage System)の確立、医薬品特許期間回復試行の推進、実験データ保護制度の整備等の複数の知財施策の模索が注目を浴びている。

「一般の人の服用問題の解決で肝心なのはイノベーションであり、これらの施策により、医薬品研究開発の活力が大きく刺激され、中国の医薬品産業のイノベーションの発展レベルが引き上げられ、中国の医薬品産業の健全な発展が促進される。」知的財産権戦略及び管理のコンサルティング企業である上海TiPLabのバイオ医薬品分野マネージングパートナー張琤氏が本誌の取材を受けた際に、特許連携制度の確立、特許期間回復試行の推進等の施策により、医薬品特許関連情報の双方向の透明性が高くなり、さらには、新薬メーカーが積極的に新薬を開発するようになると述べた。

新しい政策が製薬会社のイノベーションに資する

詳細には、今回の「意見」は、6つの方面に関係している。なお、医薬品のイノベーションの促進とジェネリック薬の発展において、医薬品特許連携制度の確立、ジェネリック薬の特許侵害リスクの低下、ジェネリック薬の発展の奨励、医薬品特許期間回復制度試行の推進を模索すべきことが重点的に指摘されている。臨床試験と評価承認とにより販売が遅れた期間については、適切に特許期間の回復をさせる。創薬、希少疾患治療薬、小児用医薬品、治療用バイオ製品及び特許チャレンジに成功した医薬品の登録申請者が提出した、自ら取得し開示されていない実験データ及び他のデータについては、一定のデータ保護期間を与える。

「この3つが一緒になって知的財産権保護のコンビネーションブローとなり、科学的系統的な保護メカニズムの構築、積極的で自発的な保護、特許権者の適法な権益の効果的な保護、イノベーションの活力の刺激に力を入れるようになる。」国家食品薬品監督管理総局の呉湞副局長が、最近メディアの取材を受けた際に次のように述べた。医薬品の知的財産権保護の一連の措置は、イノベーション型国家を確立し医薬品産業のイノベーションの発展を促進する中国のニーズに完全に適合しており、中国で発展中の伝統的医薬品のイノベーション活力の保護及び奨励に対して、特に、独自知的財産権を有する中国特有の中薬(漢方薬)分野に対して、大きな役割を果たしており、中国の医薬品産業のイノベーションの発展を全面的に引き上げるのに有益である。

実際に、自国の医薬品業界の発展促進のために、多くの国では医薬品の知的財産権に対する関連政策がある。例えば、米国では1984年に公布された「医薬品の価格競争及び特許期間の回復に関する法律」により、米国のジェネリック薬業界の新時代が本格的に始まった。この法律は、特許連携制度の確立、特許保護期間の延長のほか、「侵害のセーフハーバー」も規定しており、特許の有効期間内において、ジェネリック薬の承認を得るために取った或る行動は侵害行為とみなさないこと等を規定している。また、カナダ、日本、韓国及びEU等でも医薬品の知的財産権保護に対する関連政策及び法律が次々に公布されている。

新薬メーカーにとって、医薬品の初期開発はコストが高く、期間が長く、リスクが大きいのに対し、ジェネリック薬の製造コストは相対的に低い。したがって、知的財産権、特に特許の保護が新薬メーカーにとって重要となる。「製品販売後の収益に確実な合理的予測があってこそ、企業、人材、社会的資源をより多く新薬創出の開発事業に投入することができる。したがって、特許連携制度及び特許期間回復制度の確立は、医薬品実験データ保護制度の整備も含み、いずれも新薬メーカーが権利を保護し、行使するのに役立つものである。」張琤氏は次のように述べた。特許連携制度の確立、関連特許の情報及び法的状態の公表及び公開も特許情報の透明化にとって有益であり、ジェネリック薬企業は、ねらいを定めて行動し、リスクを客観的に評価し、できるだけ製品の販売前に紛争を解決し、法的リスクを低減し、それによって、侵害及びその訴訟による損失を避けることができるようになる。

ジェネリック薬が新たな局面を迎える

「意見」の発表によってジェネリック薬の発展にどのような影響がもたらされるか?

「新薬創出も、ジェネリック製造も奨励している。この制度が米国で30年以上実施されてきた現実から見ると、新薬創出も奨励しジェネリック製造も促進するという目的が果たされている。」呉湞副局長は次のように述べた。医薬品特許連携を例にすると、医薬品の承認過程の最中に特許侵害紛争が生じても裁判所の裁定によって解決することができれば、特許紛争と侵害リスクを医薬品の販売前に解決することができ、これは特許権者の適法な権益の保護と特許の質の向上に有益であり、ジェネリック薬企業が特許にチャレンジする市場リスクにも有益であり、特許権者であるか、ジェネリック薬企業であるかにかかわらず、いずれにとっても、同様に保護することになる。

「『意見』の発表は中国のジェネリック薬業界の良好な発展にとってプラスの促進作用を生ずる。」と張琤氏は述べた。まず、特許権の情報の透明化に伴って、ジェネリック薬企業は客観的かつ適切に、自社が対処する可能性のある侵害リスクを把握し、早めに計画し、理性的に対策を決め、リスク要因を排除する措置を積極的に取ることができ、特許紛争と、侵害の賠償、販売差止め等による損失が全体的に抑えられる。一方、これらの政策により、実力のあるジェネリック薬企業が抜きんでて、その能力を持たない企業が退場することになり、業界の資源配分を適合化し、中国のジェネリック薬業界の全体の競争力を引き上げる作用が働く。

また、張琤氏によると、「意見」の発表は中国の医薬品業界の特許運用に大きな影響を与えることになるという。新薬メーカーにとっては、自社の特許資産を全面的に深く理解して、特許と製品との対応関係、それぞれの特許の保護力、及び利用可能な方法等を分析することになる。また、価値の高い特許の「実質的な価値」が増えて、医薬品企業のコア資産としてのパテントポートフォリオの地位がますます際立ち、長い目で見ると、これも企業の全体的な価値評価、技術取引及び技術移転における特許資産の重要性を必然的にますます高めることになる。ジェネリック薬企業にとっては、医薬品特許の情報がより透明化した後、業務の重点は情報収集から利用に次第にシフトしていく。これらの政策が定着すると、中国の知的財産権関連訴訟が増加することになるので、ジェネリック薬企業も自社の特許早期警戒及び監視能力と、その特許訴訟に対応する能力とを強化する必要がある。


(出典:知識産権報  2017年10月8日)

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