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欧州連合(EU)、中国に対してWTO上の紛争解決手続を開始

欧州連合(EU)は、6 月 1 日、中国の法制が欧州企業の知的財産権を害しているとして、 WTO 上の紛争解決手続を開始した。

欧州委員会のプレスリリースによれば、中国に進出する欧州企業は、中国国内企業に対 して欧州企業の有する技術の移転や利用の許諾を強制され、技術移転の際の契約条件を市 場原理に基づいて自由に交渉する能力を奪われており、WTO、特に TRIPS 協定上のルール により企業に認められている基本的な権利に相反するものとしている。

また、欧州委員会のプレスリリースによれば、今回の WTO 案件は、外国企業を差別し、 中国国内企業よりも悪条件の待遇とする、中国の技術輸出入管理条例(TIER)及び中外合 資経営企業法実施条例をターゲットとしており、外国企業を内国企業と同様の待遇で扱う (内国民待遇)ことや、特許や非公開のビジネス情報等の知的財産権を保護することとい った、WTO 上の義務に違反しているとしている。

具体的には、EU が WTO に提出したとする公表資料によれば、例えば、TIER 上、外国 企業が技術移転を行ってライセンシーが当該技術を利用した際に知的財産権侵害を構成し た場合、当該侵害に係る賠償責任は当該外国企業が追わなければならない(TIER 第 24 条 参照)という制約が課されているが、この制約は中国国内企業には対象外としており、こ れは、内国民待遇について規定する TRIPS 協定第 3 条に矛盾するとしている。また、本公 表資料によれば、中外合資経営企業法実施条例上、技術移転契約の期間は 10 年を超えては ならず、また、技術移転契約期間の満了後、技術移転を受けていた者は、この移転された 技術を継続的に利用する権利を有するとしており(同条例第 43 条参照)、これは知的財産 権の行使を制限し得る規定であるところ、特許保護の期間を少なくとも 20 年間と規定する TRIPS 協定第 33 条違反と思われるとしている。

マルムストローム欧州委員(貿易担当)は、本プレスリリースにおいて、「科学技術イ ノベーション・ノウハウは、知識基盤経済(knowledge-based economy)の根幹である。こ れにより、欧州企業がグローバル市場において競争力を維持するとともに、欧州における 数十万もの雇用を支えている。いかなる国も、欧州企業が苦労して得たこの知識を国境で 強制的に引き渡させてはならない。これは、WTO において皆が合意した国際ルールである。 主要国がルールを守らないと、システム全体が崩壊するかもしれない。」としている。

(出典:JETRO  2018年6月4日)

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